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オーストラリア初の宇宙飛行士が大阪の高校で特別講演–「準備は高校生から始められる」とエール
2025.05.29 09:00
大阪・関西万博の開催にあわせて、2018年に創設されたオーストラリア宇宙庁(ASA)の関係者が5月に来日した。万博のオーストラリアパビリオンにおいて、宇宙庁の長官が講演したほか、宇宙領域における日豪パートナーシップなどをアピールした。
5月22日には、オーストラリア初の宇宙飛行士であるキャサリン・ベネル=ペッグ氏が、大阪府立水都国際中学校・高等学校を訪れ、主に高校生たちに向けて、自身のキャリア感や宇宙飛行士訓練などについて語った。ここではキャサリン氏の講演内容を抜粋して紹介する。

宇宙飛行士になる準備は「高校生から始められる」
キャサリン氏は、オーストラリア宇宙庁から宇宙飛行士の資格を得た初めての人物。2023年にドイツの欧州宇宙機関で宇宙飛行士訓練を開始し、2024年4月に国際宇宙ステーションのミッションに参加する資格を得た。科学と工学の分野で4つの学位を取得している。また、2人の子どもの母親という顔も持つ。
子どもの頃から宇宙や科学が好きで、大学では航空宇宙工学の学位を取得したというキャサリン氏。その後は、宇宙エンジニアとして6カ国で働いていたが、4年前に宇宙飛行士の募集に応募して狭き門を突破し、幼い頃からの夢である宇宙飛行士候補に選ばれた。

「宇宙飛行士になるためのキャリアは、自分が夢中になれる技術分野であれば、サイエンティストでもエンジニアでもパイロットでも何でもいいと思う。その準備は皆さんがいる高校から始められる。しっかり勉強するだけでなく、スポーツやハイキングなどのチーム活動を通じた人間形成もとても大事。自分にとって慣れ親しんだ環境から飛び出して、ぜひ努力して欲しい」
過酷な宇宙飛行士訓練を紹介–宇宙で働くために大切なことは?
宇宙飛行士候補に選ばれたからといって、すぐに宇宙飛行士になれるわけではなく、1年ほどの基礎訓練を乗り越える必要がある。キャサリン氏は、カプセルに入って機械の回転による遠心力でロケット打ち上げ時などの重力を擬似体験できるセントリフュージ訓練や、極寒の中でのサバイバル訓練、低酸素環境で過ごす訓練など、さまざまな基礎訓練の様子を写真や動画とともに振り返った。その過酷さを目の当たりにした生徒たちからは、どよめきが起きていた。


また、2024年にJAXA宇宙飛行士の諏訪理氏、米田あゆ氏の2人とともにパラボリックフライト訓練(航空機内に微小重力環境を生み出す放物線飛行のこと)をした様子なども紹介。「日本の宇宙飛行士のお二人と一緒に訓練ができたことは素晴らしい経験だった」(キャサリン氏)と思い出を語った。

キャサリン氏が会場で「宇宙に行ってみたい人は?」と質問すると、多くの生徒たちが手を挙げた。そこで、宇宙で仕事をする上でのアドバイスとして、大きな夢を持つこと、それに加えて目的をしっかりと持つこと、既成概念にとらわれない考えを持つことの大切さなどを伝えた。最後に生徒たちから寄せられた質問に答え、特別講演を締めくくった。


講演後もキャサリン氏の周りには人だかりができ、生徒たちが次々と英語で話しかけたり、一緒に写真撮影をしたりと、時間の許す限り交流を楽しんでいた。同校にとって宇宙飛行士の来訪は初めてだったが、生徒たちにとっても貴重な経験になったようだ。
